看護

#17 選択と決意

老人福祉施設に転職するか、今の病院勤務を続けるか選択する時がきた。

バイト先は自転車で20分の距離。その間急坂もある。今の苦しさが続くなら通勤自体無理か、、いや、バスと電車で通うこともできる。

どうしたものか。

これ以上無理できない状態だったから色々考えていた。

 

バイト先は高齢者の人たちが生活していて、車いすに乗れる人もいたり、一人で歩ける人もいた。

検温と処置まわりで忙しかったけど、高齢者の人と話せるひと時がとても癒しだった。

私は高齢者が大好き。

学生時代から高齢者の福祉施設でボランティアもさせてもらっていたくらい、敬愛がノンストップ❤️

高齢者の笑顔を見るだけで心がほんわかする。

後光が差してる。

おばぁが美味しそうにおやつを食べてる表情は、微笑まずにはいられなかった。

介護士さんや看護スタッフも、私が正職員として勤務する日を楽しみにしてくれていた。

なんと幸せなことか(´;ω;`)

 

一方では、同じ頃、本職の病院勤務で印象深いことがあった。

コロナウイルスの感染対策で面会禁止が長い間続いている中、ご家族から様子を知りたいとの電話が頻回にあった。

重症患者さんを受け持っているある日、奥さんから電話があり、担当の私が電話対応していた。

患者さんの様子を伝えながら、奥さんは「そうですか。そうですか。あれは? これは?」と質問が止まなかった。

心配し、気にかけているのがすごく伝わってきていた。

患者さんは重症で、終末期だった。

それなのにご家族は顔を見ることも、触れることさえできない状況で、私たち医療者もつらい時期だった。

会わせることができなくて心苦しかった。

普段は患者さんの代弁者として責任を感じていたけど、今この状況は、奥さんの代弁者になる必要性を感じた。

私「この電話を切ったらすぐに旦那さんに伝えに行きます。何か伝えたいことがあれば教えてください。」

 

奥さんからメッセージが溢れ出てきた。

私は一言一句、聞きもらさないようメモを取りながら受話器を耳に強く押し当てていた。

最後に、奥さんは、「あの人に大好きだよと伝えてください、お願いします。」と言った。

必ず伝えることを約束し、電話を切った。

すぐに患者さんのベッドサイドへ行き、奥さんからのメッセージを伝えた。

患者さんの意識レベルは低く、目は開いているが反応はなかった。

 

その2日後、夜勤で出勤すると、ナースステーションに到着するなり同僚から話しかけられた。

同僚「チチさん! 〇〇さん昨日亡くなりました。奥さんがチチさんにお礼を伝えて欲しいって。伝えたいことはありますかって聞かれた時、本当に嬉しかったって。間に合わなかったけど、最後に伝えられて良かった、ありがとうございましたって! 」

 

奥さん、患者さんの最期に間に合わなかったか、、、

つらかっただろうな、、、

生きてる間に顔見たかっただろうに、、

奥さん、愛を伝えられて少しは救われたかな。

奥さんのお言葉で、私は救われた気がした。

 

患者さんが亡くなったことを知ったり、看取った直後の勤務はしんどい。

気持ちの切り替えも仕事には大切なことだった。

私はいつも通り夜勤に挑んだ。そして、亡くなった患者さんを悼んだ。

 

患者さんの最期に立ち会えないご家族も多い。

看護師をしていると、患者さんやご家族の生の歩みと真正面から向き合うことがよくある。

病む人に手を添え、患者さんやご家族の心に寄り添い、生涯の幕を閉じる時を見守る。

看護させていただき、光栄だった。

 

看護師としての私のやりがいは、ここにあった。

バイトは辞め、本職一本に集中することを決意した。

 

 

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です